真瀬生物学研究会の活動状況

山のトイレさわやか運動 山岳地域における水質調査図 全国の山岳域における水質汚染状況の調査が、山のトイレさわやか運動本部(田部井淳子会長)によって、2000年度から毎年継続して実施されて来ております。
 本会も白神山地の水質調査の委嘱を受け、真瀬岳・二ッ森・白神岳・藤里駒ヶ岳など登山者が飲用としている沢水、湧き水の水飲み場6カ所を調査してきております。調査項目は1.アンモニア性窒素、2.硝酸性窒素、3.亜硝酸窒素、4.COD、5.大腸菌など含有数値の有無、6.電気伝導率数値などと専門的なものでしたが、どの水場も良好で、とくに、白神岳山頂の沢水(うずら石の沢源頭)は、電気伝導率の項目を除いてすべてゼロ数値でした。
緑の国勢調査  環境庁が実施した第3回、並びに第4回の緑の国勢調査に参加協力、真瀬川・笹内川の流域と追良瀬川・赤石川の源流部、水沢川流域を調査した。
昆虫の発見、採取 ツマグロヒョウモン ♂
 ブナ帯に生息する蛾、甲類などの生息調査の中で、秋田県内では最大のミヤマクワガタ(90ミリ)の発見や、県内で初めてのツマグロヒョウモンの採取(秋田自然史研究/No.34 に発表)などがある。
イワナ原種の保全対策とモニタリング  渓流魚…主にイワナについて「魚齢と成長量」「成熟魚の年令構成」「繁殖の実態」などをテーマに調査に取り組んできた。  しかし、魚類の調査、研究においては、先ずフィールドの確保が最大の課題であるが、昨今の渓流はいかなるところでも釣り人が容易に入るため、調査個体を長期間継続して観察し、調査することは非常に難しいことである。
 このため、本会では真瀬川においては、八森町真瀬川漁協へ一部支流域のイワナを種として永久に維持、保全できるようにしながら、観光資源としても活用するよう、禁漁流域の設定を提言。このことが認められて、1985年より中ノ又沢の永久禁漁が実現した。
 内水面の漁協が自主規制で永久禁漁をしたことは、当時として画期的なことであり、秋田県内では第1号である。また併せて、本会のモニタリングフィールドの確保ともなった。しかしながら、禁漁流域であっても林道沿えのため、密漁されるという問題も発生し、なかなか思ったような成果が得られていないのが現状である。
 一方、真瀬川水系とは別に白神山地を流れる粕毛川、赤石川、追良瀬川、笹内川、津梅川など各水系の源流部で人跡少ない地域については、1970年代より詳細にわたるイワナの生息調査を実施。各水系の源流部にあっては落差の大きい滝が魚止めとなって、その上流部には、イワナが生息していないことを確認してきた。
 また、近年の河川においては、釣り人の増加によるイワナの著しい減少や漁協による人工種苗の放流によって、天然イワナの消滅の危惧を抱き、厳密な意味では生態系に係わる問題があるかも知れないと思いながらも、種としてのイワナ保護のため、それらの流域に小さな区間を設け、同じ水系のイワナを移殖・定着させ保全をはかる傍ら、フィールドにすべく、本会では標識をつけたイワナを放流し、順次モニタリングを実施してきた。
イワナの体長と体重の相関関係 <立入り禁止区域への入林許可>
 "開発か保護か"から、正に急転直下、林野庁の森林生態系保護地域の設定と環境庁の自然環境保全地域の指定。さらに矢継ぎ早に世界遺産条約への登録推薦と、学術調査以外には人を寄せつけない地域に指定されてしまった我々のフィールド・白神山地。
 しかしながら、これまでブナ原生林の価値とか、動植物の宝庫などと「母なる森」論がマスコミによって広められ、前述のように認知されたため、今後、増えるであろう研究者や不心得な採集マニア、あるいは登山者や釣り人への対 応をどうするか、行政の管理体制の行方が気になるところである。
 それはともかく今年度、2回にわたって実施した粕毛川源流におけるイワナの生息調査について報告する。
<入林手続き>
 1993年6月11日 入林許可申請書提出
 1993年6月16日 許可証交付
<調査月日>
 第1回  6月27日
 第2回  7月5日
<管理状況>
 入山禁止設定から丸2年を経過、水沢川・金山沢林道終点に二ツ井営林署で設置した入山禁止地域の範囲を示す看板は、一部破損されたままの状態。まして稜線切通し(鞍部)にあった看板は、主柱が折れて設置以後の見回り管理が不十分で、ずざんそのもの。山を知らない行政官と現場担当の認識ズレがこのような状態にしているものと思われた。
 三蓋沢とコマカ沢出合の幕営地の焚火あと周辺には、ミミズの空き箱や食料の空パック、空き缶などが燃やしもせずに散乱。明らかに1回目の調査以後、わずか数日前に釣り人が来ていたことを物語っていた。
<河川状況>
 三蓋沢流域の特長として、出合から三蓋大滝までの3分の2の行程は、平坦で高度差の緩やかな幅広い河原が続く。起伏が少ないだけに水の流れも緩やかであり、流水量が減水する渇水期には水が伏流して地下を走り、いわゆる川干し状態となる。調査回数が少ないだけに断定は出来ないが、年に何度かこの状態が反復されているとすれば、流域全体として見てイワナにとっては、環境良好とはいえないだろう。
 今回の調査時には、3カ箇所にわたって川が干し上がり、最大のものは100mにも及んでいた。
<生息状況>
 三蓋沢より三蓋大滝までの調査では、保護地域設定の前に入った年と比べると、その時期より水量不足というマイナス要因はあっても、全くといっていいほど数がでず、時たま逃げ泳ぐ魚影を見つけてもサイズは10〜12cm程度。以前は各ポイントごとに生息していて大物はいなかったが、一口に云うと、さすがは人跡少ない源流だと思わせる状態であったから、禁止以後もこれまでに幾度となく釣り人が入っていたものと推察された。期待の三蓋大滝の滝壷でもその魚影がみられなかった。
 三蓋沢におけるイワナの生息状況は、捕獲全体の数が少なく、22cm最大サイズであったが、捕獲できたうちの約半数が12cm以下であった。これに魚影の観察分も併せると、生息している7割近くを12cm以下で占めていると思われる。
 なお、1回目の調査は時間の関係もあって、大滝の上流域のみということであるが、大物は捕獲されていない。また、出合下流の粕毛川本流の枝沢では、人が入っていないのか中型を主群にして生息、数も確認されている。
<成長と体重>
 イワナについての文献は、他の魚種と比べると極めて少ないようである。あっても側線鱗数とか、鰓耙数、幽門垂数などの分類や斑紋色彩といった専門学的な研究であって、魚の成長の基本をなす体長や体重について調べたデータが──大まかに書かれているものは別として──発表されていたとか、或いは、文献を引用した、というのは見あたらない。やはり継続できるフィールドの確保と追跡調査の困難さからか、その時々に採捕したものについての研究のみであるようだ。
 今回の調査で計測した体長と体重についての相関関係を見ると、生息環境によって同じクラスでも差のあることが分かる。当然、餌と生息数の密度に左右されていることで、20cm以上になると肥満度の差が顕著である。また、空腹状態のものと就餌直後のものとでは差がでているようだ。
 検体数の少ないクラスもあって、標準的な数値を出すことは難しい点もあるが、一応近似値をとった粕毛川源流におけるデータは次のようになる。但し、捕獲した検体数が少なく判断の難しいものは、参考資料として( )で示した。

<イワナの体長と体重の変化>

体 長 体重 体 長 体重 体 長 体重
10.0cm→ 20g 18.0cm→ 80g 23.0cm→ 130g
12.0cm→ (30g) 19.0cm→ 80g 24.0cm→ 150g
15.0cm→ 60g 20.0cm→ 100g 25.0cm→ (190g)
16.0cm→ 50g 21.0cm→ 120g 26.5cm→ (210g)
17.0cm→ 70g 22.0cm→ 120g 27.0cm→ (220g)


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